萬世大路(ばんせいたいろ)は、明治初期に福島県(福島市)と山形県(米沢市)を結ぶために建設された重要な道路です。
◆建設の背景と目的
- 交通の不便: 明治以前、福島と米沢を結ぶ主要な道は険しい板谷街道であり、道幅が狭く急勾配が続く上に、冬期間は積雪で通行が困難でした。
- 両県の発展: 初代山形県令の三島通庸と初代福島県令の山吉盛典は、両県の交流と産業振興のため、新たな道路建設を計画しました。
- 明治天皇の命名: 明治14年(1881年)の開通式には明治天皇が行幸し、この道が末永く人々に愛されるようにとの願いを込めて「萬世大路」と命名されました。
◆建設の概要 - 大規模な工事: 当時としては国内でも非常に大規模な道路工事であり、総延長は約48.65kmに及びました。
- 難工事: 奥羽山脈を越えるルートには、栗子山など険しい地形が含まれ、トンネル(栗子山隧道など3つ)、橋(滝岩上橋など)、切通しなどの構造物が建設されました。特に栗子山隧道は、当時日本最長のトンネルでした。
- 最新技術の導入: 工事には、当時まだ世界に数台しかなかったアメリカ製の穿孔機が用いられました。
萬世大路の変遷 - 明治時代の繁栄: 開通後は、宿場や巡査駐在所などが設けられ、人や物の往来で賑わいました。
- 鉄道の開通: 明治32年(1899年)に奥羽本線が開通すると、輸送の中心は鉄道へと移り、萬世大路の通行量は減少しました。
- 昭和の改修: 自動車交通の普及に対応するため、昭和初期に改修工事が行われ、車道として整備されました。しかし、急勾配や冬期の積雪のため、依然として交通の難所でした。
- 国道13号の開通: 昭和41年(1966年)に、より安全で効率的な国道13号(栗子ハイウェイ)が開通したことで、萬世大路はその役割を終え、峠の部分は廃道となりました。
- 歴史遺産として: 現在、萬世大路は「歴史の道百選」や「土木学会選奨土木遺産」に選定されており、明治時代の土木技術や歴史を伝える貴重な遺産として保存されています。一部区間はハイキングコースとして整備され、当時の面影を残す石積みやトンネル跡などを見ることができます。
◆現在の萬世大路
現在の国道13号の一部区間が、かつての萬世大路のルートを受け継いでいます。また、廃道となった旧道の一部は、歴史的な遺構として静かに佇んでいます。