フラワー長井線は、山形県南陽市の赤湯駅から、川西町、長井市を経由し、白鷹町の荒砥駅までを結ぶ山形鉄道が運営するローカル鉄道路線です。その名の通り、沿線に花の名所が多いことから「フラワー長井線」と名付けられました。
歴史
フラワー長井線のルーツは、1913年(大正2年)に「長井軽便線」として赤湯〜梨郷間が開業したことに遡ります。その後、順次延伸され、1923年(大正12年)に全線(赤湯〜荒砥間)が開通しました。国有鉄道の「長井線」として運行されていましたが、特定地方交通線に指定され、国鉄再建の一環として1988年(昭和63年)にJR東日本から第三セクターの山形鉄道に転換され、現在の「フラワー長井線」となりました。2023年(令和5年)には全線開業100周年を迎えました。

路線データ
- 管轄(事業種別): 山形鉄道(第一種鉄道事業者)
- 区間・営業キロ: 赤湯 – 荒砥 30.5km
- 駅数: 17駅(起終点駅含む)
- 軌間: 1,067mm
- 複線区間: なし(全線単線)
- 電化区間: なし(全線非電化)
- 閉塞方式: 自動閉塞式(特殊)
- 最高速度: 85km/h
- 所要時間: 赤湯〜荒砥間は約1時間
運行形態
ワンマン運転が基本ですが、朝夕や多客時には車掌が同乗することもあります。概ね1〜2時間に1本程度の運行本数で、線内折り返し運転です。ワンマン運転時でも複数車両連結の場合は、進行方向側の先頭車両のみ乗車可能です。
見どころ・魅力
- 四季折々の風景:
- 春: 沿線の桜並木や菜の花が美しく、特に「置賜さくら回廊」として多くの桜の名所が点在しています。薬師桜や釜の越農村公園、伊佐沢の久保桜など、樹齢の古い古典桜を巡るのにも便利です。
- 夏: 緑豊かな田園風景が広がり、あやめ公園のあやめや川西ダリヤ園のダリアなど、色とりどりの花々を楽しめます。
- 秋: ススキが風になびく風景や紅葉も魅力です。
- 冬: 一面が銀世界となり、雪の中を走る列車の姿は幻想的です。
- ユニークな駅と列車:
- うさぎ駅長「もっちぃ」: 南陽市の宮内駅には、うさぎの「もっちぃ」が駅長を務めており、多くのファンに愛されています。
- ラッピング列車: 沿線4市町(南陽市・川西町・長井市・白鷹町)の花をラッピングした車両が運行されており、それぞれの花がデザインされた可愛らしい車両に出会えます。
- 白兎駅: 無人駅ですが、「狛兎」が出迎える葉山神社が近くにあり、縁結びのパワースポットとしても知られています。
- レトロな駅舎: 大正時代に建てられた西大塚駅のような、歴史を感じさせる木造駅舎も沿線に見られます。
地域との連携:
- 山形鉄道は地域に根差した運営を行っており、沿線住民にとって大切な生活の足であるとともに、観光客誘致にも力を入れています。
- イベント列車(美酒・美食を堪能できる列車、ファミリー向けの企画列車など)や貸切運行なども行われており、地域を盛り上げています。
- 沿線には、酒蔵や温泉、雛めぐりなど、鉄道と合わせて楽しめる観光スポットが多数あります。
- 運転士は、乗客一人ひとりに声をかけるなど、路線バスのように乗客との距離が近いのも特徴です。
フラワー長井線は、単なる移動手段としてだけでなく、山形の豊かな自然と文化、そして地域の人々の温かさに触れることができる魅力的なローカル鉄道です。